2012年6月15日金曜日

虫歯の心理学

社長である皆さんが、ある日従業員からこんな話をされたとします。

「A紙から10万円で宣伝広告を載せてみないかという話が来ていますがどうしましょう?
調べてみたところ、どうやら費用対効果は低いようです」

もちろん返事は「NO」ですよね。
ところが、その従業員がこう付け加えたらどうでしょう?

「ただし、既に手付金として40万円を支払っており、返金はされません」

十分に検討せず40万円を支払ってしまった従業員の責任問題はともかく、
きっとこう思われる方が多いのではないでしょうか。

「ここでやめたら40万円が無駄になってしまうから残りの10万円を支払って載せてみることにしようか」

しかし、この場合どのような選択をしたとしても40万円は戻ってこないわけですから、
本来であれば、論点を「新たに10万円を投資すべきかどうか?」ということだけに絞り、
費用対効果が低いのであれば40万円を諦め新たな投資はやめるべきでしょう。

この話における40万円のように、“事業に投入された費用の内、清算の縮小や撤退により回収できなくなったもの”(出典:大辞林)を『サンク・コスト(埋没費用)』と言い、
また、『サンク・コスト』がその後の判断や意思決定に影響を及ぼすことを『サンク・コスト効果』と言うそうです。

我々の仕事や日常生活において、
この『サンク・コスト効果』を認識し意識しておくのはとても大事なことだと感じています。
それにより、投資判断をする上で、よりその投資の本質を捉えることが可能となり、
結果的にコスト削減やリスク回避を図ることが可能になるからです。
個人事業者として経営判断を迫られる機会が多いのなら尚更のことですね。


最後に余談を。
今回私がこの話をした背景には、
先日私自身が歯科医院でしたこんな体験があります。

<治療も半分以上が過ぎた頃>
先生「あ〜、これ、、、もうちょっとで終わりますけど、思ったより深くまで削らなくちゃいけませんね。かなりしみると思いますけど麻酔打ちますか?」
私「(う〜ん、かなり痛いのはいやだけど、、、もう今まで痛いの我慢してきたからなぁ、、、ここまで我慢してきたんだから最後まで我慢しなきゃ何だか損した気がするし、、、)我慢します」
先生「わかりました。痛かったらすぐに言ってくださいね」

、、、、その数十秒後、脳天を突き刺すような痛みに全身から冷や汗が吐き出すのを感じながら、無様にも思ったのです。

「過ぎた我慢(サンク・コスト)などに囚われずに、我慢し続けること(投資)をやめるべきだった」と。

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