随分と間が開いてしまいましたが、
前回の記事<子育てとお金の話 前編「年少扶養控除の廃止」>の続きです。
今回は「子ども手当の支給」もとい「児童手当の支給」について書きたいと思います。
さて、私がこのブログの更新を怠っている間に年度が替わり平成24年度になりました。
そして、今年度より「子ども手当」は廃止され「児童手当」が復活しました。
その概要は以下の通りです。
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<児童手当支給月額(子ども一人当たり)>
■ 3歳未満 | ・・・ 15,000千円 |
■ 3歳~小学生 | ・・・ 【第1子・第2子】10,000円 |
・・・ 【第3子以降】15,000千円 |
■ 中学生 | ・・・ 10,000円 |
※ただし、24年6月以降は以下の所得制限あり
<児童手当の所得制限>
夫婦どちらか所得の高い方が次の所得を超える場合は、児童手当の対象外となります。
■ 0人 ・・・ 622万円
■ 1人 ・・・ 660万円
■ 2人 ・・・ 698万円
■ 3人 ・・・ 736万円
■ 4人 ・・・ 774万円
■ 5人 ・・・ 812万円
※以下、扶養親族等の数が1人増える毎に38万円をプラス
※暫定措置として、所得制限を超える場合も、子ども一人当たり月額5,000円の支給あり
<所得制限の比較対象となる所得の計算方法>
総所得金額(給与所得のみの方は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から、個人事業者の方は「事業所得」または「不動産所得」等)から8万円(一律控除)を引いて、その他の所得を加えた合計額から、以下の所得控除額を引いた金額が、所得制限の比較対象となります。
■ 雑損控除 | ・・・ 控除に相当する額 |
■ 医療費控除 |
■ 小規模企業共済等掛金控除 |
■ 障害者控除 | ・・・ 27万円 |
■ 特別障害者控除 | ・・・ 40万円 |
■ 寡婦(寡夫)控除 | ・・・ 27万円 |
■ 特別寡婦控除 | ・・・ 35万円 |
■ 勤労学生控除 | ・・・ 27万円 |
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以上を、前回も登場した青梅市在住のAさん【家族構成:妻(青色事業専従者)と小学生の子供2人、事業所得:350万円】のケースに当てはめてみましょう。
Aさんの場合、妻が専従者であり扶養親族にはなれませんから、扶養親族は子供 2人のみです。
よって、所得制限は、扶養親族2人の場合の698万円ということになります。
Aさんの事業所得は350万円ですから、その他の所得がなかったと仮定して、
所得制限698万円 > Aさんの事業所得350万円 -8万円 -所得控除
となり、所得制限はクリアされ、児童手当の年間支給額は次のようになります。
X:現在の児童手当の年間支給額 ・・・ 240,000円
この結果、
前回試算した
増税額142,000円を差し引いたとしても、Aさん一家は以下の通り収入増となります。
Y:現在の児童手当の年間支給額と増税相当額との差引き ・・・ 年間 96,000円の収入増
しかし、ここで忘れてはいけないことがあります。
平成19年以前にも児童手当は存在しており(以降、旧児童手当)、小学生以下の子供(第1子・第2子)一人につき、3歳未満は月額10,00円、3歳以上は月額5,000円が支給されていたということです。
Z:旧児童手当の年間支給額 ・・・ 120,000円
さらに、当時はまだ年少扶養控除が存在しており上記の増税もありませんでした。
つまり、年少扶養控除廃止前(子ども手当導入前)と比較するためには、旧児童手当の年間支給額(上記Z)についても減収相当額として考慮しなければいけないのです。
すると、以下の通り、実際には収入減となっていることがわかります。
Y-Z:以前の児童手当の年間支給額も考慮した場合 ・・・ 年間 24,000円の収入減
以上、2回にわたり、Aさんのケースを例に「年少扶養控除の廃止」と「児童手当の支給」が世帯収入に与える影響を検証してきましたが、これはあくまでも一例です。
たとえば、児童手当の所得制限を超えるような高所得世帯の場合、減収相当額はより大きくなるでしょうし、逆に、もともと所得税および住民税の課税がない低所得世帯においては、現金支給である児童手当=増収となるでしょう。
また、そのほかにも、子供を認可保育所に預けている家庭においては、前年の世帯所得税額をもとに算定される保育料が年少扶養控除の廃止により実質的に増額となっていることも注目すべき点です(一部自治体では経過措置として年少扶養控除分を考慮してくれるそうですが)。
まあそもそも、「年少扶養控除の廃止」の前提条件であった「子ども手当の支給」が廃止されているわけですから、結果様々な矛盾や混乱が生じてしまうのも無理はないのでしょう。
なお、現行の「児童手当の支給」についても、先行き不透明であり予断を許さない状況ですから、今後の動向に引き続き注意が必要です。